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雨倉 宏*; Chettah, A.*; 鳴海 一雅*; 千葉 敦也*; 平野 貴美*; 山田 圭介*; 山本 春也*; Leino, A. A.*; Djurabekova, F.*; Nordlund, K.*; et al.
Nature Communications (Internet), 15, p.1786_1 - 1786_10, 2024/02
被引用回数:0高い電子的阻止能領域の照射条件で高エネルギー重イオンを固体に照射すると、イオンの飛跡に沿って潜在イオントラックと呼ばれる柱状の損傷領域が形成される。イオントラックは、多くの物質中で形成されていることが知られているが、ダイヤモンドにおいて観察された例は皆無であった。高エネルギー(GeV)のウランイオンにおいてさえ、観察された例はない。本研究では、2-9MeV Cフラーレンイオンを照射したダイヤモンドにおいて、初めてイオントラックが観察された。高分解能電子顕微鏡による観察により、イオントラックの内部がアモルファス化していることが示唆され、さらに、電子エネルギー損失分光法による分析によって、グラファイト由来の-結合の信号が検知された。分子動力学法に基づく計算シミュレーションで、上記の実験結果を再現することに成功した。
山本 耀二郎*; 早川 頌*; 沖田 泰良*; 板倉 充洋
Computational Materials Science, 229, p.112389_1 - 112389_9, 2023/10
被引用回数:1 パーセンタイル:45.8(Materials Science, Multidisciplinary)ヘリウムバブルは、核融合炉条件下で生成する特有の微細構造である。これらのバブルは、自らの移動によって接近・融合し、微細構造や材料特性に大きな影響を与える。しかし複数の金属原子の移動が含まれるこれらのプロセスは、分子動力学(MD)では時間スケールの制約から扱うことができない。この研究では、自己発展原子論的キネティックモンテカルロ(SEAKMC)法により時間スケールを拡張し、Fe中のバブルの融合過程を再現した。He原子の微小な振動やFe原子の短距離変位など、活性化エネルギーが極めて低い些細なイベントを避けるため、SEAKMCに2つのアルゴリズムを導入した。He原子の微小な振動を回避するために二段階のサドルポイント検索を行い、Fe原子の短距離変位を避けるためにFe原子の変位距離に対する閾値を設定した。さらに、活性化エネルギーの上限を設定する別のアルゴリズムを追加することで、非現実的に高い活性化エネルギーを持つイベントの選択を防ぎ、MDの時間尺度よりも8桁長い秒までのシミュレーション時間において、ダンベルから楕円形への構造の変化を再現することに成功した。開発された手法は、軽元素を含む金属材料の微細構造を分析するのに効果的であり、実験と比較可能な時間スケールに到達できる唯一の手法である。
涌井 隆; 山崎 和彦*; 二川 正敏
Advanced Experimental Mechanics, 7, p.103 - 109, 2022/08
高放射化物を閉空間に閉じ込めた状態で切断・減容化する技術開発の一環として、鉛含有量が異なる放射線遮へいガラスに対して、Nd-YAGレーザーの照射条件(パワー及び照射回数)を変えた照射試験を実施した。鉛含有量、照射パワー及び照射回数の増加とともに、大きな黒色で凹形状の照射損傷とその周りにき裂が生じた。損傷に及ぼす機械的特性の影響を調べるために、非照射部及び照射部の一般的な機械特性を調べた。評価された機械的特性を基に算出された熱衝撃破壊靭性値は、鉛含有量の増加ともに減少する。黒色の照射領域の微小硬さは、非照射より10%小さくなり、レーザー照射による機械的特性の変化が確認された。
涌井 隆; 山崎 和彦*; 二川 正敏
実験力学, 22(2), p.96 - 104, 2022/06
高放射化物のレーザー溶断技術の開発の一環として、放射線遮へいガラス及び無鉛ガラスに対してパルスレーザー照射試験及び押込み試験を行った。鉛含有量が低いガラスに比べ、鉛含有量が高いガラスの損傷が大きく、損傷発生の閾値が低かった。押込み試験結果を基に、カルマンフィルタ及び有限要素を組み合わせた逆解析により、ガラスの微小塑性挙動を表す材料構成式の定数を同定した。流動応力は、鉛含有量の増加とともに低下し、レーザー照射により低下した。一方、塑性流動抵抗値は、鉛含有量の増加とともに増加し、レーザー照射により増加した。非照射及び照射領域における破壊エネルギーとき裂先端周りの塑性領域寸法を実験結果を基に算出した。それぞれの値は、鉛含有量の増加とともに減少し、レーザー照射により低下した。
末吉 哲郎*; 榎畑 龍星*; 日高 優夏*; 入江 将大*; 藤吉 孝則*; 奥野 泰希*; 石川 法人
Physica C, 582, p.1353824_1 - 1353824_5, 2021/03
被引用回数:1 パーセンタイル:7.51(Physics, Applied)高温超電導体YBaCuOyにおいて、イオン照射法を利用して三次元に配置された柱状欠陥を導入した。その際に、柱状欠陥の導入角度 (=45, 60, 80)を変化させたときの臨界電流密度の磁場角度依存性を系統的に調べた。その結果、が大きい時には、磁場角度にピークが現れるものの、全体の大きな向上が見られなかった。柱状欠陥の導入角度が大きい場合には、磁束線のチャネルフローの影響が大きく、Jc向上につながりにくい、と説明できる。一方で、が小さい時には、広い磁場角度領域にわたって顕著なの上昇が見られた。
雨倉 宏*; Toulemonde, M.*; 鳴海 一雅*; Li, R.*; 千葉 敦也*; 平野 貴美*; 山田 圭介*; 山本 春也*; 石川 法人; 大久保 成彰; et al.
Scientific Reports (Internet), 11(1), p.185_1 - 185_11, 2021/01
被引用回数:13 パーセンタイル:74.32(Multidisciplinary Sciences)シリコンへ6MeV Cイオン照射すると直径10nmのイオントラック損傷が形成されることを見出した。これは、従来知られているイオンエネルギーしきい値(17MeV)よりもはるかに低いエネルギーである。従来知られているような電子的阻止能に由来したイオントラック形成メカニズムだけでは説明できず、それだけでなく核的阻止能に由来した効果も存在する可能性を示唆している。
石川 法人; 田口 富嗣*; 喜多村 茜; Szenes, G.*; Toimil-Molares, M. E.*; Trautmann, C.*
Journal of Applied Physics, 127(5), p.055902_1 - 055902_7, 2020/02
被引用回数:7 パーセンタイル:43.4(Physics, Applied)高速重イオンをセラミックスに照射すると、イオンの入射点に隆起物(ヒロック)が形成されるとともに、イオンの通り道に沿ってイオントラック損傷が形成される。ヒロック形成とイオントラック形成を包括的に理解することが、イオン・固体衝突による照射損傷メカニズムを理解する上で重要なマイルストーンである。本研究では、YFeOを対象として、照射後の透過型電子顕微鏡による観察データの蓄積により、ヒロックとイオントラックが同じ大きさであることが分かった。さらに、ヒロックの縦方向の寸法と横方向の寸法との間に、常に相関関係が成り立っていることを突き止め、その相関関数をイオンの通過による局所融解モデルの枠組みで説明することができた。
石川 法人; 大久保 成彰; 田口 富嗣
Nanotechnology, 26(35), p.355701_1 - 355701_8, 2015/09
被引用回数:31 パーセンタイル:75.31(Nanoscience & Nanotechnology)UOの模擬物質として研究されることが多いCeOセラミックス材料に、200MeV Auイオンを斜入射方向から照射し、照射後試料を透過型電子顕微鏡(TEM)で微細観察した。その結果、イオン一つ一つが照射表面に形成するナノサイズの隆起物(ヒロック)が、試料表面に形成されるだけでなく、試料端のクラック面にも形成されることが分かった。試料端のヒロックは、TEMで直接観察することが可能なため、ヒロックの結晶性が本研究で初めて明らかになった。観察されたヒロックは、ほぼ均一で結晶性を有していること、さらには結晶方位が母相と同じことが分かった。さらに、ヒロックが球状形状をしていることが分かったので、表面に入射したイオンの入射点において材料の局所的な溶融を引き起こし、溶融した隆起物が表面張力によって球状に変化したプロセスが示唆された。
二川 正敏
IOP Conference Series; Materials Science and Engineering, 74(1), p.012001_1 - 012001_7, 2015/02
被引用回数:2 パーセンタイル:65.53(Materials Science, Multidisciplinary)高出力水銀ターゲットにおける材料問題に関する研究成果、すなわち、液体金属脆化による疲労き裂伝播速度の上昇や破壊脆性値の増加に関する研究成果、イオンビーム照射による照射脆化評価及びナノインデンテーションによる極微小領域の力学特性評価法に関する研究成果、陽子線入射励起衝波による生じるマイクロピット群損傷機構に関する研究成果について総括的にまとめると共に、さらにその抑制技術に関する技術開発について報告する。
Nordlund, K.*; Sand, A. E.*; Granberg, F.*; Zinkle, S. J.*; Stoller, R.*; Averback, R. S.*; 鈴土 知明; Malerba, L.*; Banhart, F.*; Weber, W. J.*; et al.
NEA/NSC/DOC(2015)9 (Internet), 86 Pages, 2015/00
本報では、中性子, イオン, 電子による1次的照射損傷の現在の理解についてレビューを行う。照射損傷の指標であるdpaの有効性について、特にその指標の部分的な欠陥について詳しい議論する。現在最も標準的に使われているNRT-dpaは照射損傷が単位体積あたりの照射エネルギーに比例するので、そのようなスケーリングが成り立つ場合には完全に有効であり、異なった環境での照射を比較する場合に使用できる。しかしながら、NRT-dpaはいくつかの問題点が指摘されており、ここではそれについて詳しく議論し、NRT-dpaを改良した式を提案する。
徳永 陽; 西 剛史; 中田 正美; 伊藤 昭憲*; 酒井 宏典; 神戸 振作; 本間 佳哉*; 本多 史憲*; 青木 大*; Walstedt, R. E.*
Physical Review B, 89(21), p.214416_1 - 214416_8, 2014/06
被引用回数:7 パーセンタイル:31.81(Materials Science, Multidisciplinary)AmOの低温の磁気相転移の起源をO NMR法により調べた。この相転移については帯磁率では8.5K付近で明確な異常が観測されるが、中性子やメスバウアー分光測定では磁気双極子の秩序は観測されていない。このためNpOと同じ高次多極子の秩序の可能性も指摘されていた。今回我々は新たにO核を置換したAmO試料を準備し、それをできる限り短時間でNMR実験サイトへと運び測定を行った。これにより自己照射効果がほぼ存在しない場合の電子状態を確認することができた。さらに同試料を極低温状態に一ヶ月保管することで、自己損傷効果が急激に進み、それによって短時間で試料内の電子状態に変化していく様子を観測することができた。さらにNMRスペクトルの温度依存性と核磁気緩和時間の測定から、AmOの磁気相転移がスピン-グラス的な特徴を持つことも明らかになった。
根本 義之; 三輪 幸夫; 加治 芳行; 塚田 隆
Journal of Nuclear Materials, 343(1-3), p.313 - 317, 2005/08
被引用回数:3 パーセンタイル:24.17(Materials Science, Multidisciplinary)核破砕中性子源の構造材料として考えられているオーステナイト・ステンレス鋼の照射による腐食挙動の変化を調べるため、高純度Fe-18Cr-12Niを用いて研究を行った。この試料に473-773KでNiイオン照射及びH, He注入を行い、腐食試験を行った。腐食挙動の評価には原子間力顕微鏡を使用した。腐食量は照射損傷量の増加に伴い増加した。また、照射温度の上昇に依存して腐食が大きくなった。そして、H注入は低温では腐食を促進したが高温では腐食を抑制した。また、He注入はいずれの温度条件においても腐食を抑制した。
小西 哲之*; 木村 晃彦*; 秋場 真人; 中村 博雄; 長坂 琢也*; 室賀 健夫*; 長谷川 晃*; 松井 秀樹*
日本原子力学会誌, 46(5), p.311 - 322, 2004/05
国際核融合材料照射施設(IFMIF)は、核融合中性子照射による材料特性や材料寿命の実証のための核融合炉模擬の高エネルギー中性子照射施設であり、国際エネルギー機関(IEA)のもとで、日本,欧州,米国,ロシアの国際協力により進められている。このIFMIF計画は、平成12年から平成14年に渡り、IFMIFの実現に必要な要素技術の開発のため、加速器・ターゲット・テストセル・設計統合に関する要素技術確証フェーズ活動(IFMIF/KEP活動)を実施した。国内では、大学と原研の密接な連携協力によりIFMIF/KEP活動を実施した。加速器では、ECRイオン源の4週間連続運転、ターゲットでは、14m/sまでのLi流動、テストセルでは、均一な試験片温度制御等、IFMIFの実現に必要で、重要な要素技術はほぼ確証された。今後は、これらの要素技術を基礎とした長時間安定運転に必要な各系の工学実証と建設に必要な工学設計が必要である。
根本 義之; 三輪 幸夫; 辻 宏和; 塚田 隆
日本AEM学会誌, 11(4), p.242 - 248, 2003/12
現在、軽水炉の高経年化との関連において重要な検討課題とされているオーステナイト・ステンレス鋼の照射誘起応力腐食割れ(IASCC: Irradiation Assisted Stress Corrosion Cracking)の基礎的な研究のため、照射材における腐食挙動の評価方法の開発及び解析を行った。イオン照射を適用し、照射温度,照射損傷量,ヘリウム(He)注入量を変化させて照射を行った。照射材の腐食挙動の評価には原子間力顕微鏡(AFM: Atomic Force Microscope)を適用し、その評価のために最適な腐食条件などについて検討した。その結果、照射材の腐食挙動の評価方法を開発し、粒界及び粒内の腐食挙動について評価を行った。方位像顕微鏡(EBSP: Electron Backscatter Difraction Pattern)による観察結果との組合せにより、粒界性格と腐食挙動の相関について検討した。また照射条件と腐食挙動の相関について検討した。
西島 俊二*; Hearne, S. M.*; Jamieson, D. N.*; 大島 武; Lee, K. K.; 伊藤 久義
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 210, p.196 - 200, 2003/09
被引用回数:1 パーセンタイル:12.48(Instruments & Instrumentation)イオンビーム誘起電流(IBIC)を行いて炭化ケイ素(SiC)ショットキーダイオードの結晶損傷を調べた。n型またはp型六方晶SiCエピタキシャル単結晶上にアルミニウム、ニッケル及び金電極を蒸着することで30電極径のSiCショットキーダイオードを作製し、1m径の2MeVヘリウムイオンマイクロビームを10m10mエリアに10から10/cmの範囲で照射することで損傷を調べた。その結果、2MeVヘリウムイオンの照射量の増加とともにIBICが徐々に減少することが見出され、結晶損傷により発生した再結合中心により電荷収集量が減少することがわかった。
神谷 富裕; 及川 将一*; 大島 武; 平尾 敏雄; Lee, K. K.; 小野田 忍*; Laird, J. S.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 210, p.206 - 210, 2003/09
被引用回数:1 パーセンタイル:12.48(Instruments & Instrumentation)原研高崎の重イオンマイクロビーム・シングルイオンヒットシステムでは、宇宙空間における半導体素子のシングルイベント効果(SEU)の研究を目的として、微小半導体素子におけるシングルイオン誘起過渡電流特性の評価が行われている。このような測定では、微小領域に繰り返し入射される高エネルギー重イオンによる物質の照射損傷の影響が問題となる。しかし、入射イオンの個数を制御し、照射損傷の領域をmレベルで限定できるシングルイオンヒット技術により、シングルイオン入射により生成された電荷がいかなる空間的広がりにおいて収集されるかを知ることも可能である。実験では試験素子である炭化珪素P型PNダイオードの径1mの領域に12MeV Niイオンを1個ずつ連続して照射し、過渡電流波形を計測した。その結果、シングルイオンの入射毎に連続してパルス波高及び収集電荷量が減衰するのが観測された。これはこの領域への1イオン入射による全ての電荷収集過程がそれまでの入射によって蓄積された照射損傷の影響を全て受けているためであると考えられる。これにより電荷収集過程は、横方向には1mあるいはそれ以上の広がりをもつことが予測される。今回はこの現象と、イオンの飛程及び素子の空亡層の厚みとの関係について考察する。
安堂 正巳; 谷川 博康; 實川 資朗; 沢井 友次; 加藤 雄大*; 香山 晃*; 中村 和幸; 竹内 浩
Journal of Nuclear Materials, 307-311(Part1), p.260 - 265, 2002/12
被引用回数:39 パーセンタイル:90.08(Materials Science, Multidisciplinary)核融合炉構造材料の第一候補材である低放射化フェライト鋼の開発において、高エネルギー中性子によって生じる照射損傷が材料特性へ及ぼす影響を明らかにすることは最も重要な課題の一つである。しかし現時点では、材料強度特性変化に対するヘリウムの効果については十分に明らかとなっていない。そこで、照射条件を高精度に模擬できる多重イオンビーム照射法,照射面部分の硬さ変化を精密に測定可能な超微小硬さ試験及び押込み変形部の微細組織観察法を組み合わせ、低放射化フェライト鋼に導入した損傷領域の強度特性変化についての評価を行った。まず弾出し損傷を加えた試片について微小硬さ試験を行った結果、特定の照射温度条件において明瞭な硬化が見られた。この硬化つまり変形抵抗増加の原因は、主として微細な欠陥の生成によるものであり、さらに同時照射下でのヘリウムの存在がその変形抵抗に及ぼす影響について報告を行う。
菊地 賢司
日本原子力学会誌, 44(8), p.622 - 623, 2002/08
本ワークショップは、日本,米国,ヨーロッパで同時に建設あるいは計画している入射陽子エネルギーがMW級の大強度核破砕中性子源の建設を、材料技術の観点から推進検討評価しており、そのR&Dの成果をいち早く、実際の開発にフィードバックすることを狙いの1つにしている。主な話題は、核破砕ターゲットステーションの開発と現状,ADSに関連した研究開発の現状及び材料技術課題,現存する核破砕中性子源からの報告,圧力波によるキャビテーション・ピッテング注),高エネルギー陽子による照射損傷と生成ガスの影響,核計算では、中性子計算と線量評価,鉛ビスマス,水銀中の材料腐食,イオン照射実験である。
西島 俊二*; 大島 武; Lee, K. K.
Nuclear Instruments and Methods in Physics Research B, 190(1-4), p.329 - 334, 2002/05
被引用回数:11 パーセンタイル:58.04(Instruments & Instrumentation)2MeV-Hイオンを用いたイオンビーム誘起電流(IBIC)測定によりシリコン(Si)pnダイオード及び炭化ケイ素(SiC)ショットキーダイオードの照射欠陥を評価した。照射量の増加とともIBICパルス強度が減少し、Si pnダイオードでは9.2E12/cmのHイオン照射後、パルス強度は未照射の85%まで減少する結果が得られた。また、SiCショットキーダイオードでは6.5E12/cm照射後に未照射に比べ50%までIBICパルス強度が減少した。IBICパルス強度の減少は照射により発生した結晶損傷に起因すると考えられ、IBIC測定が半導体素子の照射損傷を評価するのに利用できることが示された。
塚田 隆
日本溶接協会「原子力構造機器の材料,設計,施工,検査に関する講習会」テキスト, 40 Pages, 2002/00
原子炉の炉内構造材は、高温高圧水と中性子・線照射という、他の工業プラントにはない特殊な環境で使用され、この環境の影響が材料に蓄積することにより、特有な経年劣化・損傷を生じる。炉内構造物の経年劣化事象としては、照射誘起応力腐食割れ(IASCC)の検討が重要である。IASCCについては、炉内複合環境が材料へ及ぼす多様な影響を検討することが必要であり、1980年代中頃からの各国での研究により、現象論的な理解は進んでいる。しかし、劣化予測に必要な機構論的な理解は未だ十分ではない。本講演では、IASCCに関して現象論的,機構論的な観点から、現在の研究の状況,動向及び今後の課題などについて概観する。